1on1の質問技術|部下の思考と本音を引き出す質問の種類と使い方

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1on1で質問しても部下が短く答えるだけで深い対話にならない、という状況は多くの現場で起きています。その原因の多くは、質問の「種類」と「使い方」にあります。同じ「なぜ」という言葉でも、使い方によって部下の思考を広げる問いにもなれば、委縮させる詰問にもなります。

本記事では、1on1の質問技術として「引き出す質問と詰める質問の違い」「オープン質問・深掘り質問・未来志向質問の3層設計」、さらにテーマ別の質問例と避けるべき質問パターンを整理します。質問の技術・使い方の習得を通じて、部下が主体的に考え、本音を話せる1on1の実現を目指す管理職・OJT担当者の方に活用いただける内容です。

なお、質問技術は1on1の進め方全体の中でも特に重要な要素の一つです。

引き出す質問と詰める質問の違い

1on1で部下が短く答えるだけで深い話にならない原因として、無意識に「詰める質問」を使ってしまっていることが挙げられます。コーチング理論に基づくと、引き出す質問と詰める質問には明確な役割の違いがあるとされています。

詰める質問の特徴

  • 「なぜできなかったのか?」(原因追及・責任追及の問い)
  • 「はい/いいえ」で答えが完結するクローズド質問
  • 上司の考えに部下を誘導する質問

引き出す質問の特徴

  • 「どう感じているか?」(感情や考えを聴く問い)
  • 「何が一番気になっているか?」(部下が自分で整理できる問い)
  • 自由に答えられるオープン質問

詰める質問は部下を守勢に回らせ、本音を話しにくくします。一方、引き出す質問は部下の思考プロセスを活性化し、自分なりの答えを見つける機会を提供します。この区別を意識することが、1on1の質問技術の出発点です。

3層の質問設計|オープン・深掘り・未来志向の使い方

効果的な1on1の質問は、以下の3層で設計することで部下の思考を段階的に引き出すことができるとされています。コーチング実務では広く用いられているアプローチです。

第1層:オープン質問(現状を開く)

まず部下の現在の状況や感情を自由に話してもらう段階です。「なぜ・どう・何が」を使った5W1H型の質問で、部下が自分の言葉で現状を整理できるようにします。

ポイントは、部下が自分のペースで答えられる「余白」を作ることです。答えを急かさず、部下が考える時間を十分に確保することが重要です。

第2層:深掘り質問(理解を深める)

部下の発言に対して「もう少し聞かせて」「それはどういう意味ですか」「具体的には?」といった問いで、表面的な答えの背景にある本質的な課題や感情を明らかにします。

深掘り質問のコツは、部下の言葉をそのまま使いながら確認することです。「プレッシャーを感じている、ということですか?」のように繰り返すことで、部下は安心してさらに詳しく話せるようになります。

第3層:未来志向質問(行動を促す)

現状の理解が深まったら、「理想の状態は?」「次に何をしたいか?」といった問いで、部下自身が解決策や行動を考えられるよう導きます。問題に焦点を当てすぎるとモチベーションが低下するおそれがあるため、解決策・成長・行動へと問いを移していくことが大切です。

この3層を意識することで、1on1が単なる報告の場ではなく、部下の思考力と主体性を育てる場として機能するようになります。

オープン質問の例と使い方

オープン質問は「なぜ・どう・何が」を軸に、部下が自分の言葉で自由に答えられる形式の問いです。以下に状況別の例を示します。

現状把握のためのオープン質問

  • 「今の業務で何が一番やりがいを感じますか?」
  • 「どんなときに成長を実感しますか?」
  • 「今、何が一番のストレスになっていますか?」
  • 「チームの雰囲気はどう感じていますか?」
  • 「なぜそう思うのか、もう少し聞かせてもらえますか?」

感情・本音を引き出すオープン質問

  • 「その件について、どう感じていますか?」
  • 「なぜそれが気になるのでしょうか?」
  • 「どういう状況だと安心して働けると感じますか?」
  • 「どんなサポートがあると助かりますか?」

価値観・キャリア意識を探るオープン質問

  • 「どんな時に充実感を覚えますか?」
  • 「仕事で大切にしていることは何ですか?」
  • 「どんな成果に誇りを感じますか?」

深掘り質問の技術

深掘り質問は、部下の最初の答えをそのまま受け取るのではなく、その背景にある本当の思いや課題を明らかにする技術です。以下の3つのパターンを使い分けることで、対話が自然に深まっていきます。

「もう少し聞かせて」系の問い

  • 「その話、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」
  • 「具体的にはどんなことがありましたか?」
  • 「そのときの状況を教えてもらえますか?」

「それはどういう意味か」系の問い

  • 「"難しい"というのは、具体的にどういうことですか?」
  • 「"やりにくい"とは、どの部分がやりにくいのでしょうか?」
  • 「それはあなたにとってどんな意味がありますか?」

対比で理解を深める問い

  • 「反対に、うまくいくときはどんな状況ですか?」
  • 「以前はどうでしたか?」
  • 「理想的な状況とはどう違いますか?」

未来志向質問の例

現状の理解が深まったら、部下が自分なりの解決策や目標を考えられるような未来志向の質問に移ります。上司が答えを提示するのではなく、部下の中にある可能性を引き出すことが目的です。

理想を描く問い

  • 「理想的にはどんな状況になっていたいですか?」
  • 「3か月後、どんな自分になっていたいですか?」
  • 「この課題が解決したら、次に何をしたいですか?」
  • 「どんな成果を出せたら満足できますか?」

行動を引き出す問い

  • 「まず何から始めてみたいですか?」
  • 「今度はどうやってみたいですか?」
  • 「どんな準備ができそうですか?」
  • 「誰かに相談してみたいですか?」

選択肢を広げる問い

  • 「他にはどんな方法があると思いますか?」
  • 「もしリソースが十分あったら、何をしますか?」
  • 「別の角度から見ると、どんなアプローチが考えられますか?」

テーマ別質問リスト

1on1で扱うテーマに応じて、効果的な質問は変わります。以下にテーマ別の質問例を3層構造で整理します。

業務・成果に関する質問

フェーズ質問例
現状把握今の業務で何が一番大変ですか? / どの仕事にやりがいを感じますか?
深掘り大変というのは、具体的にはどの部分ですか? / なぜその仕事にやりがいを感じるのでしょう?
未来志向どんな業務ができるようになりたいですか? / 次はどんな挑戦をしてみたいですか?

成長・スキルに関する質問

フェーズ質問例
現状把握最近成長を感じたのはどんなときですか? / もっと伸ばしたいスキルは何ですか?
深掘りなぜそのスキルを伸ばしたいのでしょう? / 成長を実感するのはどんな瞬間ですか?
未来志向1年後、どんなスキルを身につけていたいですか? / そのために何から始めたいですか?

人間関係・チームに関する質問

フェーズ質問例
現状把握チームの雰囲気はどう感じますか? / 誰とのやり取りが一番やりやすいですか?
深掘りやりやすいのはなぜだと思いますか? / どんなコミュニケーションが取りにくいですか?
未来志向チームでどんな役割を果たしたいですか? / 関係性をよくするために何ができますか?

モチベーション・キャリアに関する質問

フェーズ質問例
現状把握今の仕事の中で何が一番楽しいですか? / どんなときにモチベーションが下がりますか?
深掘り楽しいと感じるのはなぜですか? / モチベーションが下がる背景には何がありますか?
未来志向将来どんな仕事をしてみたいですか? / そのために今何ができますか?

避けるべき質問パターン

質問技術の習得には、使ってはいけないパターンを知ることも重要です。

誘導質問

上司の考えに部下を誘導する質問は、部下の主体的な思考を奪います。

  • × 「この案がベストだと思わない?」 → ○ 「どの案が一番実現可能だと思う?」
  • × 「やっぱり準備不足だったんじゃない?」 → ○ 「今回の件をどう分析している?」

クローズド質問の多用

「はい/いいえ」で答えられる質問ばかりでは、深い対話になりません。

  • × 「順調に進んでる?」 → ○ 「進捗はどんな感じ?」
  • × 「問題はない?」 → ○ 「今気になっていることは?」

詰める質問の連続

原因追及・責任追及の質問を連続させると、部下は委縮してしまいます。

  • × 「なぜできなかったのか?」「なぜ相談しなかったのか?」
  • ○ 「どんな状況だった?」「何があると良かった?」

複数の質問を同時に投げかける

一度に複数の質問をすると、部下はどれに答えればよいか迷ってしまいます。

  • × 「今の状況はどう?問題はない?今後の予定は?」
  • ○ 「今の状況はどう?」(答えを聴いてから次の質問へ)

まとめ:質問技術は実践で身につくスキルです

1on1ミーティングにおける質問技術は、部下の思考と本音を引き出すための重要なスキルです。「引き出す質問」を意識し、「詰める質問」を避けること。そしてオープン質問→深掘り質問→未来志向質問という3層の流れを意識することで、部下が自分で考え、自分で答えを見つけられる1on1に近づけます。

重要なのは、部下の発言を受け止め、さらに深く掘り下げていく姿勢です。この記事で紹介した質問の型を参考に、まず次回の1on1で2〜3パターン試してみることから始めてみてください。なお、効果的な質問を実際に使うには質問を事前に整える方法も重要になります。質問の技術は実践の積み重ねによって身につくスキルであり、部下の反応を見ながら少しずつ自分なりのパターンを確立していくことが大切です。